土地建物等の譲渡による譲渡所得については、所得期間に応じて次のように長期と短期に区分します(措法31①②、32①)。
5年超…長期譲渡した年の1月1日における所有期間
5年以下…短期
資産の譲渡の日 (収入計上時期) は、次のいずれかを選択できます(所法36①、所基通36-12)。
① その資産を相手方に引き渡した日 (原則)
② 譲渡契約の効力発生の日
(注) 例えば、土地を譲渡した場合、所有期間の計算にあたり、譲渡の日について引渡しベースを選択し、取得の日について契約ベースを選択することもできます。つまり、譲渡の日、取得の日は物件ごとにどちらをベースにするかを選択できます (所基通33-9)。
資産の取得の日は、次のように取り扱われています (所基通33-9)。
① 他から取得した資産…原則として、その資産の引渡しを受けた日
ただし、売買契約の効力発生の日 (農地の場合は売買契約の締結日) をその資産の取得の日とすることもできます。
② 自ら建設した資産 …建設が完了した日
③ 他に請け負わせて建設した資産…その資産の引渡しを受けた日
④ 贈与、相続又は遺贈により取得した資産…原則として以前の所有者の取得の日を引き継ぎます (所法60①)。
⑤ 固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例を受けている場合…旧譲渡資産の取得の日を引き継ぎます (所令168①、措法33の6①、措通31・32共-5 (1) )。
⑥ 居住用財産の買換えの特例、特定の事業用資産の買換えの特例を受けている場合…実際の取得の日 (措通31・32共-5(2) )。
⑦ 借地権者が底地を取得した場合や底地を所有している者が借地権を取得した場合…借地権部分と底地部分とを別個のものとして判定します (所基通33-10)。
長期、短期それぞれについて次のように計算します (所法33③④、措法31①、32①)。
譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) = 譲渡所得金額
必要経費
譲渡所得の金額 - 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
譲渡所得の収入金額は、資産の譲渡によってその年に収入すべきことが確定した金額をいいます (所法36①)。
①取得費には、次のような金額が算入されます ( 所法38①、令126、所基通38-1、 38-8、38-8の2、38-9、38-10、38-11、38-12 )。
②減価償却…建物等のように使用又は期間の経過により価値の減少する資産の取得費は、次により計算します(所法38②、所令85)。
非業務用(自己の居住用など)の場合
取得価額 - 減価の額 = 取得費
減価の額 = 取得価額 × 0.9 × 耐用年数の1.5倍の年数に応ずる旧定額法の償却率 × 経過年数
構造 | 木造 | 木骨モルタル造 | 鉄筋コンクリート | 金属造① | 金属造② |
---|---|---|---|---|---|
償却率 | 0.031 | 0.034 | 0.015 | 0.036 | 0.025 |
(注) 「金属造①」…軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3㎜以下の建物の償却率です。
「金属造②」…軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3㎜を超え4㎜以下の建物の償却率です。
土地建物の購入時の時価の割合で区分しますが、建物の標準的な建築価額(下表参照)を基に建物の取得価額を計算する方法(この方法を「土地残余法」といいます。)によることもできます(原則として、譲渡所得の計算を行う場合にのみ使用します。)。
(注) 先に土地代金を算定し、残りを建物代金とする方法もあります(この方法を建物残余法といいます。)が金額の妥当性を検証することが必要です。
(単位:千円/㎡)
構造 | ||||
---|---|---|---|---|
建築年 | 木造・木骨モルタル造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 鉄筋コンクリ-ト造 | 鉄骨造 |
昭和45 | 28.0 | 54.3 | 42.9 | 26.1 |
46 | 31.2 | 61.2 | 47.2 | 30.3 |
47 | 34.2 | 61.6 | 50.2 | 32.4 |
48 | 45.3 | 77.6 | 64.3 | 42.2 |
49 | 61.8 | 113.0 | 90.1 | 55.7 |
50 | 67.7 | 126.4 | 97.4 | 60.5 |
51 | 70.3 | 114.6 | 98.2 | 62.1 |
52 | 74.1 | 121.8 | 102.0 | 65.3 |
53 | 77.9 | 122.4 | 105.9 | 70.1 |
54 | 82.5 | 128.9 | 114.3 | 75.4 |
55 | 92.5 | 149.4 | 129.7 | 84.1 |
56 | 98.3 | 161.8 | 138.7 | 91.7 |
57 | 101.3 | 170.9 | 143.0 | 93.9 |
58 | 102.2 | 168.0 | 143.8 | 94.3 |
59 | 102.8 | 161.2 | 141.7 | 95.3 |
61 | 104.2 | 172.2 | 144.5 | 96.9 |
61 | 106.2 | 181.9 | 149.5 | 102.6 |
62 | 110.0 | 191.8 | 156.6 | 108.4 |
63 | 116.5 | 203.6 | 175.0 | 117.3 |
平成元 | 123.1 | 237.3 | 193.3 | 128.4 |
2 | 131.7 | 286.7 | 222.9 | 147.4 |
3 | 137.6 | 329.8 | 246.8 | 158.7 |
4 | 143.5 | 333.7 | 245.6 | 162.4 |
5 | 150.9 | 300.3 | 227.5 | 159.2 |
6 | 156.6 | 262.9 | 212.8 | 148.4 |
7 | 158.3 | 228.8 | 199.0 | 143.2 |
8 | 161.0 | 229.7 | 198.0 | 143.6 |
9 | 160.5 | 223.0 | 201.0 | 141.0 |
10 | 158.6 | 225.6 | 203.8 | 138.7 |
11 | 159.3 | 220.9 | 197.9 | 139.4 |
12 | 159.0 | 204.3 | 182.6 | 132.3 |
13 | 157.2 | 186.1 | 177.8 | 136.4 |
14 | 153.6 | 195.2 | 180.5 | 135.0 |
15 | 152.7 | 187.3 | 179.5 | 131.4 |
16 | 152.1 | 190.1 | 176.1 | 130.6 |
17 | 151.9 | 185.7 | 171.5 | 132.8 |
18 | 152.9 | 170.5 | 178.6 | 133.7 |
19 | 153.6 | 182.5 | 185.8 | 135.6 |
20 | 156.0 | 229.1 | 206.1 | 158.3 |
21 | 156.6 | 265.2 | 219.0 | 169.5 |
22 | 156.5 | 226.4 | 205.9 | 163.0 |
23 | 156.8 | 238.4 | 197.0 | 158.9 |
24 | 157.6 | 223.3 | 193.9 | 155.6 |
25 | 159.9 | 256.0 | 203.8 | 164.3 |
26 | 163.0 | 276.2 | 228.0 | 176.4 |
27 | 165.4 | 326.5 | 240.2 | 197.3 |
イ.新築の建物を取得している場合
建物の建築年に対応する建築価額表の建築単価にその建物の床面積(延床面積)を乗じて計算した金額が、その建物の購入代金となります。なお、マンションの場合の床面積は専有部分の床面積として差し支えありません。
(例)平成元年に総面積が100㎡の新築木造住宅を購入した場合
建物の購入代金 123,100円 × 100㎡ = 12,310,000円(A)
土地の購入代金 購入代金の総額 - (A)
ロ.中古の建物を取得している場合
建物の建築年に対応する建築価額表の建築単価に床面積を乗じて計算した金額を基に、その建築時から取得時までの経過年数に応じた減価償却費相当額を控除した残額を購入代金とすることができます。
(例)平成元年7月に床面積が100㎡の中古木造住宅(昭和58年3月の建築)を購入した場合
建築時の建物の価額 102,200円 × 100㎡ = 10,220,000円
減価償却費相当額 10,220,000円 ×0.9 × 0.031 × 6年(注)=1,710,828円
(注)経過年数の6ケ月以上の端数は1年とし、6ケ月未満の端数は切り捨てます。
建物の購入代金 10,220,000円 - 1,710,828円 = 8,509,172円 (B)
土地の購入代金 購入代金の総額 - (B)
③概算取得費 ( 譲渡収入金額 × 5% )
実際の取得費より概算取得費の方が有利なときや、取得費が不明なとき (注) に適用することとされています (措法31の4①、措通31の4-1 )。
譲渡収入金額 × 5 %
実際の取得費 (上記①②による取得費) いずれかの多い方の金額
(注) 取得費が不明な場合、他に合理的と認められる方法があれば、その方法により算定した金額とすることができます。
④相続財産を譲渡した場合の取得費加算
相続又は遺贈により取得した財産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの間に譲渡した場合には、その譲渡した資産の取得費は、本来の取得費に、次により計算した金額を加算することができます。ただし、譲渡収入金額からこの規定を適用する前の取得費と譲渡費用を控除した残額を限度とします(措法39、措令25の16)。
譲渡費用とは、資産を譲渡するために直接要した費用で次に掲げるような費用をいいます(所法33③、所基通33―7、33―8)。
(注)譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持又は管理に要した費用は、譲渡費用に含まれません(所基通33-7(注)書き)。
特別控除額には、次のような種類があります。
譲渡の形態 | 特別控除額 |
---|---|
① 居住用財産を譲渡した場合 | 3,000万円 |
② 収用等により資産を譲渡した場合 | 5,000万円 |
③ 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合 | 2,000万円 |
④ 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合 | 1,500万円 |
⑤ 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 | 800万円 |
⑥ 平成21年及び平成22年中に取得した土地等を譲渡(長期譲渡取得)した場合 | 1,000万円 |
(事例)
(計算)
① 長期譲渡所得の金額
(A) 収入金額 5,000万円
(B) 取得費 土地 2,000万円
建物 減価償却費相当額
1,600万円×0.9×0.031×17年=758.88万円
(注)譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持又は管理に要した費用は、譲渡費用に含まれません(所基通33-7(注)書き)。
所得費
1,600万円-758.88万円=841.12万円
合計 2,000万円+841.12万円=2,841.12万円
(C) 譲渡費用 169.98万円
(D) 長期譲渡所得の金額
5,000万円-(2,841.12万円+169.98万円)=1,988.9万円
② 課税長期譲渡所得金額
1,988.9万円<3,000万円(注) ∴0
(注) 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除