不動産価格の下落で含み損を抱えた居住用財産を譲渡して買い換える場合、一定の要件の下で、譲渡損失を3年間にわたって繰り越して所得から控除する制度が平成10年譲渡分の所得税(住民税については平成11年譲渡分)から創設されました。これは、資産デフレによる住宅価格の下落を踏まえ、ライフサイクルに応じた買換えを支援する措置といえます。
平成16年度改正により、土地建物等の譲渡損失の損益通算及び繰越控除が廃止されましたが、居住用財産の譲渡損失については、一定の要件の下で、損益通算及び繰越控除が認められています。
個人が居住用財産を譲渡した場合において、一定の期間内に居住用財産(買換資産)の取得(その買換資産の取得のための住宅借入金等を有する場合に限ります。)をして居住の用に供したときは、一定の要件の下で、その居住用財産の譲渡損失の金額について損益通算及び翌年以後3年内の各年分(合計所得金額が3,000万円以下である年分に限ります。)の総所得金額等からの繰越控除を認めるという制度です(措法41の5)。
この制度と買換資産の取得に係る住宅借入金等に関する住宅ローン控除とを併用することもできます。
次のすべての要件にあてはまることが必要です(措法41の5、措令26の7③~⑫、措通41の5-3~41の5-17)
① 譲渡資産
(A) 平成10年1月1日(住民税については平成11年1月1日)から令和元年12月31日(平成30年度改正のより延長)までの間の居住用財産の譲渡であること
(B) 譲渡した年の1月1日における所有期間が土地建物とも5年超であること
(C) 譲渡先が、その個人の配偶者、直系血族、生計を一にする親族などの特殊関係者でないこと
(D) 譲渡した居住用家屋の敷地に係る譲渡損失のうち面積500㎡を超える部分に相当する金額は、繰越控除の対象から除かれます。
② 買換資産
(A) 譲渡した年の前年1月1日から譲渡した年の翌年12月31日までの間に居住用財産を取得すること
(B) 取得日から翌年12月31日までに居住の用に供すること
(C) 居住用家屋の床面積(登記記録の面積)が50㎡以上であること
(注) 繰越控除を受ける年については、その年の年末において買換資産の取得に係る住宅借入金等を有すること
③ その他
(A) 繰越控除を受ける年分の合計所得金額が3,000万円以下(注)であること(譲渡した年分の損益通算については、所得制限はありません。)
(注) 繰越控除を受ける年については、その年の年末において買換資産の取得に係る住宅借入金等を有すること
(B) 譲渡した年の前年又は前々年において、居住用財産を譲渡した場合の課税の特例の適用を受けていないこと
(C) 譲渡した年又は前年以前3年内において、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと